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就学義務とは?
日本国憲法の「教育を受けさせる義務」
日本の子どもは、6歳になると小学校に入学しますが、このことは法令ではどのように定められているのでしょうか。
日本国憲法26条(教育を受ける権利と受けさせる義務)
1 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
ここで、法律の定めるところによりの「法律」は、「教育基本法」「学校教育法」「社会教育法」などをいいます。
また、「無償」とは、授業料不徴収ということであって、教科書、学用品その他一切のものまで無料ということではない、という判例があるそうです。つまり、日本国憲法の記述は、教科書が無償というところまでは入っていないのですね。給食費ももちろんです。
ですから、義務教育の教科書が無償であるというのは、日本国憲法とは別の法律によるものなのですよ。
これについては、「教育課程・教育内容」の項目をご覧ください。
学校教育法の「就学義務」
さて、話を元に戻します。日本国憲法26条の第2項をうけて、学校教育法では次のように定めています。
学校教育法16条(普通教育の義務)
保護者は、次条に定めるところにより、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。
学校教育法17条(就学義務)
保護者は、この満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
これによると、就学義務というのは親(保護者)の義務であって、子どもの義務ではないということになります。ここは注意すべきポイントですね。
同じく、中学校についても次のように定めています。
学校教育法17条
2 保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を終了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
これも親(保護者)の義務ですね。保護者が責任を負うわけです。
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就学義務違反の罪とは?
出席の督促とは?
それでは、保護者が子どもを学校に行かせない場合、すなわち就学義務を履行しない場合、どうなってしまうのでしょうか?
これについては、次のように定められています。
学校教育法17条
3 前2項の義務の履行の催促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。
この「政令」とは、学校教育法施行令のことですね。
では第何条でしょうか?
学校教育法施行令21条(教育委員会の行う出席の督促等)
市町村教育委員会の教育委員会は、前条の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が法(学校教育法のこと)第17条第1項又は第2項に規定する義務を怠っていると認められるときは、その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。
うわ~。そうなんですか。「前条の通知」とは何かというと、
「小中学校では、児童生徒が7日間続けて欠席の場合や出席状況が良好でない場合、保護者に正当な事由がないときは、校長が教育委員会に通知しなければならない。」
というものです。
このまえ、急に不登校になった生徒が亡くなる事件がありましたが、教育委員会への通知に該当する事例かもしれません。事件の後、文部科学省から長期休業をはさんでの生徒の実態調査があったような。
また話を元に戻します。
その前に、「督促」の意味の確認ですが、「督促」とは、「早くするように急がせること。うながすこと。」です。「催促」との違いですが、「催促」は「早く行なうように要求すること。せきたてること。」ですので、「督促」はやんわりと「うながす」、「催促」は強めに「せきたてる」ですね。同じようですが、「督促」は少し優しい表現なのですね。
就学義務違反の罪とは
さて、もう1度戻ります。
教育委員会が保護者に対してこの出席を督促した後、督促を受けても就学させない場合は、次の法律があります。
学校教育法144条(就学義務違反の罪)
第17条第1項又は第2項の義務の履行の督促を受け、なお履行しないものは、10万円の罰金に処する。
は~。保護者の「就学義務違反」は罪になるのですね。
つづく
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