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分限処分の種類
これまで調べたことで、分限処分は地方公務員にとって「不利益処分」であることがわかりました。
それは、一定の事由がある場合の、職員の意に反する「不利益処分」でした。
「一定の事由」とは、職員がその職責を十分に果たせないこと、でした。
分限処分の趣旨(理由)は、職員が十分に職責を果たすことができなければ、公務の能率を維持できないから、でした。
つまり、分限処分の目的は、公務の能率の維持及びその適正な確保のため、でした。
以上がこれまでの分限処分のまとめです。
さて、分限処分には4つの種類があるということです。
どんなものなのでしょうか。
分限処分には、「免職」「降任」「休職」「降給」の4つの種類がある。
「免職」とは
免職とは、公務員の職を失わせるものです。
懲戒処分にも免職がありますが、何度もいうように、処分の目的が異なります。
免職の事由は、地方公務員法で定められているもののみです。
・勤務実績がよくない場合。
・心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又これに堪えない場合。
・その職に必要な適格性を欠く場合。
・職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合。
この事由以外には、分限免職になることはありません。
なお、懲戒免職は退職金の全部又は一部が支給されず、年金も減額となりますが、分限免職はその点での不利益はなく、全額支給されます。
「降任」とは
降任とは、現在より下位の職に位置付けることです。
降任の事由は、地方公務員法で定められているもののみです。免職と同じ事由です。
「休職」とは
休職とは、職員に身分を保有させながら、職に従事させないことです。
懲戒処分には「停職」がありますが、やはり処分の目的が違います。
休職の事由は地方公務員法、条例で定められているものです。
・心身の故障のため、長期の休養を要する場合。
・刑事事件に関し起訴された場合。
・条例で定める理由
参考までに、本県の条例の分限「休職」の事由は次のようなものでした。
・学校、研究所その他これに準ずる公共的施設においてその職員の職務に関連があると認められる学術に関する事項について、長期の調査、研究又は指導に従事する場合。
・水難、火災その他の災害により生死不明又は所在不明となった場合。
なお、休職の場合の給与について本県の場合は、条例に別段の定めがない限りいかなる給与も支給されないことになっています。
「降給」とは
降給とは、現に受けている給与等級より会の給与に決定することです。
懲戒処分には「減給」がありますが、減給は一定期間であり、その期間のあとは復活するのに対して、降給は給料額そのものを減額するので、退職までずっとそれが続きます。
ただし、「降任」による給与の減額は、「降給」ではありません。
また、教員が教育委員会の事務職になり、給料が下がることなども「降給」ではありません。
降給の事由は、条例で定める事由になるのですが、本県では降給という処分は基準の設定が難しいため行われていないということです。
現在、実際に行われている分限処分は病気による「休職」と、「免職」の2つのようです。それ以外の「降任」と「降給」は実際にはほとんど行われていないようです。
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分限の「効果」とは?
分限の「効果」
分限の「効果」というものは、条例で定めることになっています。
効果というと、いい方向に進むように聞こえますが、実際にはどんなものなのでしょうか。
本県の場合を見てみます。
・休職の期間は、3年を超えない範囲において、任命権者が定める。
・休職の期間が3年に満たない場合には、その休職を発令した日から引き続き3年を越えない範囲内においてこれを延長することができる。
・任命権者は、休職の期間中であっても、その事由が消滅したと認められるときは、すみやかに復職を命じなければならない。
どういうことを「効果」と呼ぶのか、私には読み取れません・・・。
さらに、
復職の場合、「復帰プログラム」というものを行います(各地方公共団体で行われていると思いますが)。休職期間の3年間の中で行うものなので、3年目に入ったらその計画にはいり、復職の手続を3年満了日前に終えなければなりません。
もし復職の手続が完了しなければ、免職となります。
まとめ
最後に条文です。
地方公務員法第28条(降任、免職、休職等)
1 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
4 職員は、第16条各号(第3号を除く)の一に該当するに至ったときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。
第1項の一は、地方公務員法改正前はただ単に「一 勤務実績が良くない場合」でした。
改正後は人事評価が入りました。
人事評価を勤務実績の証拠(事実)として使うのですね。
私は、人事評価は好きくない、です。
また、「良くない」が「よくない」とひらがなになりました。
ひらがなの理由は何なのでしょうね。
第16条とは、欠格条項のことです。第3号とは、懲戒処分で失職した後2年間は選考を受けられないことなので、既に失職しているというものです
地方公務員法の参考書
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