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今回の内容
「教科書を教える」と「教科書で教える」という議論はよく聞かれます。
2つのことはどう違うのでしょうか。
どちらが良くてどちらが悪いことなのでしょうか。
今回の内容
1 「教科書を教える」と「教科書で学ばせる」の違い
2 算数・数学の教科書を使わない授業はどうなのか
3 ねらいを示したうえでの、「教科書を読みとる」という学習活動はアクティブである
参考書はこちら
協同学習がつくるアクティブ・ラーニング / 杉江修治 【本】
「教科書を教える」と「教科書で学ばせる」
教科書を使わない授業が多い
筆者は、教科書を使わない授業が多いと感じているそうです。
教科書を使わないのは不思議なことなのだそうです。
なぜ不思議なのでしょうか。
「教科書を教える」とはどういうことか
教科書を使わない理由は、「教科書を教える」ということを嫌っているからではないでしょうか。
どうしてかというと、「教科書を教える」というのは単なる知識・理解にとどまっていることになるからです。
それでは子どもの主体性や思考力が感じられないからです。
しかし、教科書の使い道はそれだけではありません。
「教科書で学ばせる」とはどういうことか
「教科書で学ばせる」とは、教師が教科書の内容を教えるということではありません。
「教科書で教える」も、「教える」とは言いながら、実はそうではないようです。
筆者は、「教科書で学ばせる」ことはもっと頻繁にあっていいのではないかと述べています。
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算数・数学の教科書を使わない授業はどうなのか
教科書を使わなくても結局は教科書と同じ内容の授業である
先ほどの、筆者が「多いようだ」と感じる「教科書を使わない授業」は、結局教科書の内容と変わらないものだったそうです。
時折、発問はするのですが、内容は教科書とほぼ同じだということでした。
教師は、発問によって子どもに考えさせているのでしょうが、ただ、そのような発問に答えられる子どもはその教科が得意な者に限られます。
その他の者は、受け身で聞いているだけで、本人は何も考えていない可能性が高いと筆者は言います。
「可能性が高い」というのは、とくにデータがあるわけではなく、筆者が感じたことのようです。
筆者の提案と子どもの反応
ここで筆者は授業内容の提案をしています。
「教科書と同様の内容を講義するのならば、まずは教科書の読みとりから入ったらどうでしょうか。」
解説や式の展開を個別に読み取らせるのです。
なぜかというと、ここで筆者の解説が入ります。
「算数や数学であれば、解説の後にある問題を自力で解くためです。明確に指示をすれば、全員が学びに参加します。自力ではわからない少数の子どもに対しては、教師が支援をしたり、仲間との学び合いによって理解を促したりする機会も与えます。」
教科書を読みとらせる授業の勧め
算数や数学以外の教科でも、きちんとねらいを示したうえで、教科書を読みとらせるという授業を、もっと取り入れたらいいと筆者は考えています。
なぜなら、「教科書を読みとる」という活動、言い換えれば「学びとる」という学習活動は「アクティブ」であるからなのだそうです。
「学びとる」という学習で形成される学力はPISAの学力調査で求められる「読解力」に通じます。
国際比較で問題とされていた日本の子どもの「読解力」は、最近では上昇しています。
しかし、教師が教科書を見せずに教える授業が多く残っている限りは、本当に読解力が上昇しているのか定かではありません。
テスト慣れしてきているだけかもしれないのです。
日本の子どもの課題として「家庭学習の少なさ」が指摘されているのだそうです。
筆者は次のように言います。
「教科書が学びの重要な手がかりだという認識が定着していないことも、自学自習がなされない原因の1つではないかと思うのです。」
まとめ
まとめ
一般的にアクティブ・ラーニングと言われる授業の「アクティブ」と、筆者が言う「アクティブ」という状態は、アクティブという言葉の使い方が異なるのかもしれません。
しかし、「教科書を読みとる」という授業が生徒にとって「アクティブ」であるということは、「読解力」を向上させることにつながるというのは、意外と盲点なのかもしれません。
確かに、「数学の問題の意味が分からない」という生徒もよくいますし、「化学は第2外国語と同じだ」なんていう先生もいましたので、教科書に書いてあることを読みとるというのは基本中の基本なのですね。
さらに、「教科書の読みとり」を家庭学習でやってきておけば、授業も効率が上がるのでしょうが、授業中に「教科書の読みとり」をやっていると、授業が進まないということも起こってくるかもしれません。ここが難しいところですね。
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