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キャリア教育の定義はどのように定められているのか?
前回の記事では、結局「キャリア教育とは何か」という問いに対して、明確な答えは出していませんでした。今回は早速そこから解決していきたいと思います。
キャリア教育の定義は?
キャリア教育の定義はつぎのものになると思います。
平成23年1月31日
中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」
キャリア教育とは、
「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」
のことをいう。
文部科学省の公式文書にある「キャリア教育」の定義としては、これが一番新しいものかもしれません。
これ以前は、中間報告等に同じ文言がありますが、次のようにされていた定義もありました。
平成16年
キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書
キャリア教育とは、
「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」
のことをいう。
平成16年では「児童生徒一人一人のキャリア発達」とあるように、キャリア発達は「一人一人の発達のこと」であり、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくので、「一人一人にふさわしいキャリア」というものがあるということだったのですね。
それが、平成23年には、「一人一人の」という文言が、「キャリア発達」から切り離されています。
切り離されたのは、なにか意味があるのでしょうか。
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キャリア教育の定義が変わった理由とは?
「キャリア教育の手引き」シリーズでは、平成16年に提示された定義が、平成23年に変更された理由が次のように述べられています。
中央教育審議会は、この定義を提示した理由を次のように述べている。これには留意する必要があろう。
キャリア教育の必要性や意義の理解は、学校教育の中で高まってきており、実際の成果も徐々に上がっている。
しかしながら、「新しい教育活動をさすものではない」としてきたことにより、従来の教育活動のままでよいと誤解されたり、「体験活動が重要」という側面のみをとらえて、職場体験活動の実施を持ってキャリア教育を行ったものとみなしたりする傾向が指摘されるなど、一人一人の教員の受け止め方や実践の内容・水準には、ばらつきのあることも課題としてうかがえる。
このような状況の背景には、キャリア教育のとらえ方が変化してきた経緯が十分に整理されてこなかったことも一員となっていると考えられる。
このため、今後、上述のようなキャリア教育の本来の理念に立ち返った理解を共有していくことが重要である。
切り離された理由は書いていませんでしたが、偏った解釈や従来のままでよいという解釈は、認められないということを言っていますね。これらの考え方は「問題外」ということでしょうか。
また、「キャリア教育のとらえ方が変化してきた経緯」についての同答申の説明も掲載されています。
長くなりますが、次のとおりです。
中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」(平成11年)では、キャリア教育を「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」であるとし、進路を選択することにより重点が置かれていると解釈された。
また、キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書(平成16年)では、キャリア教育を「『キャリア』概念に基づき『児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育』」ととらえ、「端的には」という限定付きながら「勤労観・職業観を育てる教育」としたこともあり、勤労観・職業観の育成のみに焦点が絞られてしまい、現時点においては社会的・職業的自立のために必要な能力の育成がやや軽視されてしまっていることが課題として生じている。
無論、勤労観・職業観が十分に形成されていないことは様々に指摘されており、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度の育成を目指す体系的なキャリア教育を通して、勤労観・職業観を始めとする価値観を形成・確立できるよう働きかけていくことは極めて重要である。
しかし、これまでのキャリア教育においては、勤労観・職業観の育成のみに焦点が絞られ、平成11年の中央教育審議会答申以降、継続的に求められてきた能力や態度の育成がやや軽視されてしまっていたことは見過ごされるべきではないだろう。今日、キャリア教育の本来の理念に立ち返った理解が強く求められている。
また、キャリア教育を理解するためには、上に示した定義における「キャリア」「キャリア発達」についての正しい理解もまた不可欠である。
まとめ
キャリア教育の定義は、平成11年、平成16年、平成23年と少しずつ変化してきているのですね。
中央教育審議会が提示した定義を、現場の教員が「誤って」解釈している、あるいは「誤解している」ため、キャリア教育の本来の理念に立ち返った理解が強く求められているからである、といっています。
中央教育審議会と教育現場が、いかにずれているのかが目に見えるようです。
誤解されないような定義を作るということは難しいのかもしれません。
誤解されない定義を作る能力がないのかもしれません。
中央教育審議会とはそういうものであると思えば、理解もできますが、文部科学省は教員の立場に立ってほしいと思いますね。
最近「ゆとり教育」でも同じようなことがありました。
「現場が誤って解釈した」と文部科学大臣が発言しましたね。
この辺でやめておきます。
さて、
平成16年、平成23年のどちらにも出てくる「キャリア発達」についての定義と、「キャリア」についての定義もはっきりさせておかなければならないようですね。そして「キャリア教育の本来の理念」もです。
長くなったので、これについては次回まとめます。
つづく
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