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障害者の権利に関する条約からの流れ
特別支援教育は、障害者の権利や人権尊重との関わり抜きでは進められません。
世界的な動きと日本の動きがどのように進行しているのか、見て行きたいと思います。
平成18年(2006年)12月 国連総会採択「障害者の権利に関する条約」
目的:障害者の人権・基本的自由の享有の確保、障害者の固有の尊厳の尊重の促進
内容:障害者の権利の実現のための措置等を規定
・障害に基づくあらゆる差別の禁止(合理的配慮の否定を含む)
→「合理的配慮の否定」とは、過度の負担ではないにもかかわらず、
障害者の権利の確保のために必要な調整(例えばスロープの設置など)
を行わないことです。
・障害者の社会へ参加・包容の促進
・条約の実施を監視する枠組みの改善(「枠組み」という表現は最近多いですね。)
さて、この条約が国連総会で採択された後は、どのように経過したのでしょうか。
まず、この条約に賛成の国が、条約に署名していきます。
平成19年(2007年)9月日本が署名しました。誰が署名したのでしょうか?国連日本代表の方でしょうか。それとも総理大臣でしょうか。
平成20年(2008年)5月 条約締結国が20カ国に達する。これに伴い条約が発効される。
「発効」とは、効力を生じることですね。採択された後1年と5ヶ月かかっています。
平成23年(2011年)8月 障害者基本法一部改正
「障害者の権利に関する条約」の批准に向け改正されました。
「批准」とは、条約に対する国家の最終的確認あるいは同意のことをいいます。
日本においては、国会が条約の内容を審査することにより、締結権者(内閣)の恣意的な行為をコントロールしているのです。
条約に同意するためには、国内の法律も整えておかなくてはならないということでしょうか。
批准のために改正された条文のうち、16条は教育に関する部分なので、よく理解し、おさえておくべきところです。
障害者基本法16条(教育)
1 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者である児童および生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究ならびに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。
学校教育法施行令のところでも似たような内容がありましたね。
国内では次のようなこともありました。
平成19年4月文科省初等中等教育局長「特別支援教育の推進について(通知)」
これは国連の障害者権利条約採択のすぐ後でした。
平成24年7月中教審「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」
平成25年9月文科省「学校教育法の一部改正について(通知)」
再び戻ります。
平成25年(2013年)12月 条約締結のための国会承認
この国会で認められたのですね。
平成26年(2014年)1月 日本政府が国連に批准書を寄託
このことにより正式に批准されたことになりました。
まとめ
なんとなく特別支援教育の最近の動向がわかりかけてきました。
本当に最近のことなのですね。動きが激しすぎます。
次からは、特別支援教育の用語について調べていきたいと思います。
新しい用語がたくさんあるようですね。
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