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服務の宣誓とは?
服務の宣誓
服務の宣誓とは、職員に対し、公務員の使命を自覚させ、確認させるため、就任の際宣誓させることをいいます。
地方公務員法第31条(服務の宣誓)
職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
服務宣誓の義務は、職員が国民・住民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するものであることから課せられる義務です。
これは通常の私的労働関係においては見られない特別のものです。
「条例の定めるところにより」とありますが、条例では、服務の宣誓はどのように定められているのでしょうか。
本県の例を見てみましょう。
職員の服務の宣誓に関する条例(抜粋)
新たに職員となった者は、任免権者又は任命権者の定める上級の公務員の面前において、警察職員以外の職員にあっては様式第1号、警察職員にあっては様式第2号による宣誓書に署名押印してからでなければ、その職務を行ってはならない。
様式第1号
宣 誓 書
私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓います。
私は、地方自治の本旨を体するとともに、公務を民主的且つ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、全体の奉仕者として誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います。
年 月 日 氏名 印
本県の警察職員の宣誓の内容は省略されていましたが、おそらく以下のようなものであると思われます。
様式第2号
宣 誓 書
私は、日本国憲法及び法律を忠実に擁護し、命令及び条例を遵守し、地方自治の本旨を体し、警察職務に優先してその規律に従うべきことを要求する団体又は組織に加入せず、何ものにもとらわれず、何ものをも恐れず、何ものをも憎まず、良心のみに従い、不偏不党且つ公平中正に警察職務の遂行に当たることを固く誓います。
年 月 日 氏名 印
もう1つ、消防職員の宣誓書です。
様式第3号
宣 誓 書
私は、日本国憲法及び法律を尊重し、命令、条例、規則及び規程を忠実に擁護し、消防の目的及び任務を深く自覚し、その規約が消防職務に優先して従うことを要求する団体又は組織に加入せず、全体の奉仕者として誠実且つ公正に消防職務の遂行に当たることを固く誓います。
年 月 日 氏名 印
警察や消防は、労働組合などの団体に入れないのですね。
警察の文章には「不偏不党」(どちらも味方せず公平中立の立場に立つこと)なんていう文言が入っていたり、警察らしいなあと感じます。
これらの宣誓書は、役所の職員となる入庁式などで、署名してから首長の前で宣誓するのが一般的なのだそうです。
でも、自分が最初に職場に言ったときはどうだったか思い返してみると、このような宣誓書は書いた記憶がないのですね。
教員の場合は各学校で辞令交付が行われて、それで終了だったような気がします。
もし自分が書いたものを見ることができるなら、見たいものです。
県庁に保管されているのかな?
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宣誓書の内容とは?
宣誓書の内容
宣誓書の内容を見るとわかりますが、職員は何を宣誓しているのかというと、
○憲法の尊重・擁護
○職務の誠実公正な執行(忠実の義務・誠実の義務)
の2つのことです。
憲法尊重義務は、職員がその任務を遂行するに当たり、憲法を遵守してこれに違反しないことのほかに、憲法の理念の実現のために積極的に力を尽くすことを意味します。
憲法擁護義務は、憲法に違反する行為を予防するとともに、これに抵抗して憲法規定の実施に努めることを意味します。
忠実の義務は、上司の職務上の命令に忠実に服従することを意味します。
誠実の義務は、上司の命令に服従するにとどまらず、全体の奉仕者たることの自覚に基づき、命令を受けなくても自主的に公共の利益のために勤務することを意味します。
これに関して、憲法に違反する上司の職務上の命令に対して、職員が服従する義務があるのかどうか。
どうなんでしょうね。
服務の宣誓は公務員の義務である
宣誓書の内容に戻ります。
「宣誓書に署名押印してからでなければ、その職務を行ってはならない。」と条例にありますが、これは署名押印するまでは働くことはできない、ということなのでしょうか?
いいえ。
服務上の義務は、宣誓によって発生するのではなく、職員として採用されたことによって発生する義務です。
宣誓書への署名は職員の任命条件ではなく、宣誓を行わないとしても、任命に対する影響はありません。
宣誓というのは、職員が服務上の義務を負うことを確認する儀式というわけです。
ただし、服務の宣誓は職員の義務であるため、行わなかった場合には服務規律違反となり、懲戒処分の対象となります。
地方公務員法第29条(懲戒)
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
地方公務員法が適用されるのですね。
服務の宣誓だけで、だいぶ長くなったのでこのあたりで止めておきます。
まとめ
公務員は「服務の宣誓」をしなければならない。
この宣誓は、職員としての自覚を促すものである。
任命権者に対する宣誓ではなく、住民に対する宣誓である。
宣誓は、職員が服務上の義務を負うことを確認するものである。
職員の服務上の義務は、この宣誓によって生じるものではなく、採用されたことによって生じるものである。
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