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営利企業への従事等の制限
営利企業とは
私人の財産的利益の増大を目的として、継続的・計画的に経営されるものを言います。
まず条文を見てみましょう。
地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)
1 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第1項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
この条文の趣旨とは?
私が調べた資料は少し古いものなので、解釈が違うかもしれませんが、次のように書かれています。
本条は、営利企業等への従事を一般的に禁じた上で、例外的に、「任命権者の許可」によってその禁止を解除することにしています。
それは、「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(憲法15条)とされる職員が、一部の利益を追求する営利企業に関与することは、職員の本質に反するものと考えられるからです。
また、職員は、「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い」(35条)なければならないとされているため、他の事業若しくは事務に従事することは、職務専念義務に違反する恐れがあるとも考えられます。
(ん?これは、勤務時間外のことも含めて言っているのだろうか?)
任命権者は、職員が全体の奉仕者であり、かつ職務専念義務を負っていることから、当該職員の占めている職と当該営利事業等に特別な利害関係がなく、かつその事業若しくは事務に従事しても、職務の遂行に支障がない場合には、当該職員に対し、本条で禁止されている職員の事業若しくは事務従事等の行為を許可することができます。
要するに、任命権者の許可が得られれば、可能になる場合もあるということのようですね。
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制限行為の内容・3つのポイント
制限行為の内容・3つのポイント
任命権者の許可を受けない限り禁止されている行為として、次の3つがあります。
1 営利企業の役員等の地位を兼ねること
営利を目的とする私企業経営のために、会社等の役員等の地位を兼ねること。
役員とは、株式会社でいえば取締役、監査役などのことです。
営利団体の顧問、評議員、清算人など、人事委員会規則で定める地位を兼ねることもできません。
役員等の地位は人事委員会規則又は地方公共団体の規則で定めます。
また、営利企業とは、私人の財産的利益の増大を目的として、継続的・計画的に経営されるものをさすことから、農業協同組合、水産協同組合、森林組合、消費生活協同組合等は、ここに言う企業には該当しません。
ただし、報酬を受ける役員になる場合には、任命権者の許可が必要とされます。
2 みずから営利企業を営む(経営)こと
営利企業についてはその業種を問わないので、営利を目的とする限り「農業」も含まれます。
一般に自家用の米・野菜を生産する程度の兼業農家は営利企業ではないと解されます。
なお、職員の家族が経営することは問題ありませんが、家族名義で実質的には職員が経営している場合は脱法行為となります。
3 報酬を得て何らかの事業、事務に従事すること
本条は、報酬を得ての他事業・事務従事を全面的に禁じるものではありませんから、非営利事業・事務に有償で従事するときにも、営利事業・事務従事の場合同様、任命権者の許可が必要とされます。
報酬とは労働の対価で、これに該当しない旅費等の費用弁償や謝礼としての原稿料、講演料は含まれません。
職員が寺院の住職等の職を兼ねて、葬儀、法要等に際して受ける布施等の収入については、報酬に該当しないものと解されています。
まとめ
職員は、任命権者の許可を受ければ、営利企業等に従事することができます。
まったくの禁止ではないのですね。
条文にもあるとおり「制限」なのです。
つぎの3点が満たされれば、OKのようです。
1 職務遂行上の能率の低下をきたすおそれがないこと。
2 当該営利企業と職員が属する地方公共団体との間に相反する利害関係を生じるおそれがなく、かつ、その職務の公正を妨げることがないこと。
3 職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと。
むかしは、兼業の人がずいぶんいたような記憶があります。
うちがお寺だった先生
農業をしながら公務員であった人
田舎のほうでは、仕事に就くとすれば公務員か教員になるひとが多かったと思います。
わたしもそんなイメージを持って今の職についたのですが、今のブラック的な職務内容では兼業なんてとてもとても…
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