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教師が児童生徒に体罰を加えたらどんな責任が問われるのか?
体罰は学校教育法11条で禁止された行為であり、3つの法的責任が問われます。
(1)行政上の責任
地方公務員法29条(懲戒)
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職または免職の処分をすることができる。
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
児童生徒に体罰を加えた場合、職務遂行上の義務違反という事由により、懲戒処分の対象となります。校長も監督責任を問われる場合があります。
行政上の処分とは、行政という組織内部において行政上の責任を追及するものであるため公務員としての身分が消滅した場合、例えば退職後などにおいては、懲戒処分を行うことはできません。下記の「民事上の責任」と「刑事上の責任」とは異なります。
豊洲市場の盛り土問題では、かつての豊洲市場長に責任があるかどうかが話題になりましたが、すでに退職してしまった人は行政上の責任はないのですね。
(2)民事上の責任
損害賠償責任が問われて、傷害にかかわる医療費に加えて、精神的な慰謝料の賠償も発生することが考えられます。学校設置者と加害教員の給与負担者が訴追される場合もあります。
(3)刑事上の責任
暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)、過失傷害罪(刑法209条)などの刑事責任を問われます。
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児童生徒に対する懲戒が、体罰になるときとは?
学校教育法11条では、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」とあるわけですが、教員が懲戒であるとして行った行為が体罰となってしまうのはどんな場合なのでしょうか。
1つの見解が次のようになっています。
法務庁法務調査意見長官回答「児童懲戒権の限界について」
学校教育法11条による体罰は、懲戒の内容が身体的性質のものである場合を意味する。すなわち、
① 身体に対する侵害を内容とする懲戒(なぐる・けるの類)はいうまでもない。
② 被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒。
②は例えば、端座・直立等、特定の姿勢を長時間にわたって保持させるというような懲戒です。これはもう体罰の一種と解されます。
さらに文部科学省通知「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日 文科初第1269号)では次のように具体例を提示しています。
① 体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。
② 授業態度について指導したが、反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
③ 放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。
④ 別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。
文部科学省によれば、以上のようなものが、被罰者に肉体的苦痛を与えるようなものになるということです。
まとめ
教員が児童生徒に対する懲戒という名目で行った行為が、逆に体罰になってしまい、教員が懲戒免職になってしまったら、元も子もないですね。
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