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処分の事由を記載した説明書が任命権者から職員に交付されたとき。
不利益な処分の事由を記載した説明書が任命権者から職員に交付された場合
任命権者が職員に対して処分を行うとき、その処分が職員の意に反するものであり、かつ職員に対して不利益な処分であると任命権者が判断していれば、説明書を交付することになります。
ここは任命権者の人格が問われそうですね。
職員に対する処分が、不利益な処分かどうかは客観的に判断できます。懲戒処分か分限処分ですから。
しかし、職員の意に反する処分かどうかは、職員の心の中のことですから、直接聞いてみないとわからないことです。
あるいは、職員は不利益な処分が課されるだろうということは自覚していても、その重さが自分が考えている処分よりもおもすぎる処分であった場合は、職員の意に反することになるのでしょう。
はたまた、懲戒処分や分限処分以外でも、職員にとっては不利益な処分であると思う処分もあるでしょう。
いずれの場合でも、とにかく処分の事由を記載した説明書が任命権者から職員に交付されていれば、次の手順はどうなるのでしょうか。
地方公務員法第49条の2(審査請求)
前条第1項に規定する処分を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求をすることができる。
さて、職員は意に反するかつ不利益な処分を、説明書つきで受けたとします。
その処分を職員が不服と感じなければ、職員はその処分を受け入れます。
処分を職員が不服と感じた場合は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求をすることができます。
「のみ」の意味するところは、この段階でいきなり裁判所に訴えることはできないということですね。
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人事委員会・公平委員会の措置はどうなるのか
人事委員会又は公平委員会の審査、審理
つぎに、職員が人事委員会又は公平委員会に審査請求をしたとき、人事委員会または公平委員会はどうするかです。
地方公務員法第50条(審査及び審査の結果執るべき措置)
1 第49条の2第1項に規定する審査請求を受理したときは、人事委員会または公平委員会は、直ちにその事案を審査しなければならない。この場合において、処分を受けた職員から請求があったときは、口頭審理を行わなければならない。口頭審理は、その職員から請求があったときは、公開して行わなければならない。
2(略)
3 人事委員会又は公平委員会は、第1項に規定する審査の結果に基いて、その処分を承認し、修正し、又は取り消し、及び必要がある場合においては、任命権者にその職員の受けるべきであった給与その他の給付を回復するため必要で且つ適切な措置をさせる等その職員がその処分によって受けた不当な取扱を是正するための指示をしなければならない。
職員から審査請求を受理したときは、人事委員会又は公平委員会は直ちにその事案を審査しなければなりません。
審査の方法は「書面審理」または「口頭審理」となります。
ちなみに、
「審査」とは、くわしく調べて「定めること」または「決めること」です。
「審理」とは、くわしく調べて「処理」すること、または「はっきりさせること」です。
口頭審理は、職員が口頭審理を請求した場合に行われます。
さらに、職員が口頭審理を公開することを請求すれば、公開して行う必要があります。
審理しているところを公開しなければならないのですね。
審査請求に対する裁決
審査請求に対する裁決
次に、人事委員会又は公平委員会は、審査請求に対する採決を行います。
選択肢は
・処分の承認
・処分の修正
・処分の取り消し
のいずれかの措置を講じます。
人事委員会又は公平委員会の判断が「処分の承認」になった場合、職員はそれを受け入れるか、あるいはさらに不服の場合、いよいよ処分取消の訴えを裁判所に行います。
処分の修正や処分の取り消しになった場合は、人事委員会又は公平委員会は是正の措置をとり、任命権者に対して、職員が受けるべきであった給与その他の給付を回復し必要且つ適切な措置をさせます。
つまり、その職員が受けた処分は不当な扱いであったので、それを是正するのです。
最近では社会の流れなのか、処分が重くなってきています。
任命権者によって何でもかんでも懲戒免職処分にされたのでは、職員はたまったものではありません。
ましてや処分の事由を書いた説明書が交付されなかったら・・・ほんとに。
まとめ
今回は処分の理由説明書が交付された不利益処分を受けたときの流れについて説明しました。
不服の場合、
①職員は人事委員会又は公平委員会に審査請求する。
②人事委員会又は公平委員会は、審査し審理し採決する。
③修正・取り消しならば、人事委員会又は公平委員会は任命権者に対して是正する。
職員はその後の対応を決める。
となりました。
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