スポンサーリンク
就学に関するこれまでの経緯
・学校教育法施行令は、障害のある児童生徒の就学先決定の仕組みについて規定しています。
・平成14年以前の同令では、一定の障害のあるもの(視覚障害者等)については、例外なく特別支援学校(以前は養護学校など)に就学することとされていました。
・その後、平成14年の学校教育法施行令の改正により、認定就学者制度が創設されました。これは、小中学校の施設設備も整っているなどの特別の事情がある場合(つまり、通常の小中学校で受け入れ態勢が整っている場合)には、特別支援学校ではなく通常の小中学校へ就学することが可能になりました。これは例外的なことであり、これを市町村から認めてもらった児童生徒のことを、当時は「認定就学者」といいました。(学校教育法施行令5条)現在はH25学校教育法施行令一部改正から「認定特別支援学校就学者」となっています。
・就学先を決定する際には、平成14年以前は市町村が専門家の意見を聞いて決定することのみでしたが、平成14年以降は、保護者の意見を聞くことが義務付けられました。ただし保護者の意見が優先するわけではなく、専門家の意見と保護者の意見を聞き、総合的な視点から判断して決めていました。
(学校教育法施行令18条の2)
・この改正から10年が経過し、「小中学校」に在籍する視覚障害者等の人数は、増加を続けています。
・学校のバリアフリー化や、教職員の配置、研修体制等についても着実に充実が図られています。
確かに、学校のエレベーターの設置があったり、専門の免許を持った先生が多くなったりしていますね。
・このようなことから、障害のある児童生徒の就学先の決定について、一定の障害のある児童生徒は、原則として特別支援学校に就学するというこれまでの学校教育法施行令における考え方を改め、市町村の教育委員会が、個々の児童生徒について障害の状態等を踏まえた十分な検討を行った上で、小中学校又は特別支援学校のいずれかを判断し決定する仕組みについて改めることになりました。これが平成25年の学校教育法施行令の一部改正です。
学校教育法施行令の一部を改正する政令(平成25年)の内容
平成25年施行令改正の経緯
平成24年7月中教審「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」において、次のように報告がありました。
・就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な視点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。
この提言を受けて、これまでの学校教育法施行令における考え方が改められたのです。
これまでは、専門家の意見に加え、保護者の意見を聞く義務が加わり(優先はしない)、教育委員会が総合的に判断するというものでした。
しかも、障害があれば原則特別支援学校に就学するとされていたようです。
そして平成25年9月1日文部科学省「学校教育法の一部改正について(通知)」がありました。この通知の「第1 改正の趣旨」には、次のようにあります。
【なお、報告においては、「その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である」との指摘がなされており、この点は、改正令における基本的な前提として位置づけられるものであること。】
さて、ということはどういうことなのでしょうか。
これまでは、「保護者の意見を聞く(優先はしない)」ということでしたが、H25施行令改正では、「本人・保護者の意見を最大限尊重する」ということのようです。
すなわち、教育委員会に対して、次の3点が言われています。
1 本人・保護者に十分情報提供をすること。
2 本人・保護者の意見を最大限尊重すること。
3 教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うこと。
保護者の意見聴取の機会の拡大と尊重が、大きく変わったようですね。
最終的に決定するのは教育委員会ですが、その決定の仕組みが上記のように改められたのです。
スポンサーリンク
学びの場は固定せず、弾力的に見直すことができる
もう1つあります。
それは、就学時に決定した「学びの場」は固定されたものではなく、障害の状態の変化のみならず、その者の教育上必要な支援の内容や教育の体制の整備の変化によっても、転学等学びの場の変更を検討できることになったのです。
つまり、改正前は次のとおりでした。
障害の状況が改善もしくは変化する以外の転学の規定はない。
平成25年の改正後は次のようになりました。
状況に応じて子どもにとってより適切な「学びの場」を柔軟に提供することができるようになった。
つまり、
小中学校の施設・設備が整ったので、特別支援学校からその小中学校に転学する。
専門の先生が来て指導できる環境が整ったので、その学校に転学する。
こういったことができるようになったということでしょうか。
教育委員会は、「十分な情報提供」を継続しておこなっていかなければならないですね。
さらに管理職も個々の教育支援計画の状況を周知し、弾力的に就学先を見直していけるようにしなければなりませんね。
まとめ
施行令の中のどの条文がどのように変わったのかについては細かく触れませんが、大まかなことは理解できたと思います。
最大限弾力的に対応するために、特別支援教育の果たす役割は大きくなっているということだと思います。
関連ページ
- 特別支援教育の超基礎
- 特別支援教育についてこれからまとめます。
- 特別支援教育の経緯
- 特別支援教育の経緯についてまとめてみました。
- 特別支援教育の法的整備
- 特別支援教育の法令についてまとめました。
- 特殊教育から特別支援教育へ
- 特殊教育から特別支援教育となった最終報告をまとめました。
- 就学指導
- 特別支援教育の就学に関する基準をまとめました。
- 障害者権利条約とは
- 障害者の権利に関する条約からの流れについてまとめました。
- インクルーシブ教育システム
- インクルーシブ教育システムについてまとめました。
- 共生社会とは
- 共生社会についてまとめました。
- 合理的な配慮とは
- 合理的な配慮とは何か、まとめました。
- スクールクラスターとは
- スクールクラスターについてまとめました。
- 授業のユニバーサルデザイン
- ユニバーサルデザインについてまとめました。