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措置要求が認められているとはどういうことか
公務員の勤務関係は、基本的には近代的労働契約関係と変わりません。
そのため職員はこの労働契約関係の一当事者であることから、給料その他の勤務条件について、本来団結権・団体交渉権・争議権を通して保障されるべきものです。
日本国憲法第28条(勤労者の団結権及び団体行動権)
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
その一方職員は、「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務」すべきものとされています。(日本国憲法第15条)
つまり、争議権、団体交渉権、団結権が法律によって制約されているのです。
地方公務員法第37条(争議行為等の禁止)
地方公務員法第55条(交渉)
地方公務員法第55条の2(職員団体のための職員の行為の制限)
そこで、給与その他の勤務条件を適正ならしめるために、職員は人事委員会または公平委員会に対して、地方公共団体が適正な措置を講ずることを要求することができるのです。
そのためにこの権利が認められているのです。
認められている理由はもう1つあります。
職員の勤務条件は、各地方公共団体の条例によって決まります。
勤務条件の維持・改善のためには、条例の制定を行うよう地方公共団体に働きかけなければならないのです。
働きかけないと、勤務条件は変わらないままです。
実際は次のような条文になります。
地方公務員法第46条(勤務条件に関する措置の要求)
職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置がとられるべきことを要求することができる。
措置要求できる人はどんな人か
措置要求できる人はどんな人か
職員は措置要求を行うことができます。できるのは次の職員です。
・一般職、臨時職員、条件付採用職員
できないのは次の職員です。
・特別職、退職者(退職したら職員とはいえませんが)
退職した職員が、退職手当について措置要求する権利はないのですね。
またこの権利は職員に認められるものなので、個々の職員のほか、共同で要求することもできます。
しかし、職員ではない「職員団体」はできません。
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措置要求ができる内容
措置要求ができる内容
職員が要求できるのは、給与、勤務時間その他の勤務条件に関することです。
・措置要求できること
給与、旅費、勤務時間、休日、休暇、部分休業、執務環境、福利厚生、安全衛生
転勤しても、過去の勤務条件についても職員である限り措置要求できます。
・措置要求できないこと
職員定数の増減、予算の増額、行政機構の改廃、条例の提案、勤務成績の評定制度
これらは行政のことなので、地方公務員個人に関することではないということでしょう。
でも、たとえば給与のことは条例で決まることなので、条例を提案するまではいかなくても不服があるときは何か要求したいところですが・・・
措置要求のしくみ
地方公務員法第47条(審査及び審査の結果執るべき措置)
前条に規定する要求があったときは、人事委員会又は公平委員会は、事案について口頭審理その他の方法による審査を行い、事案を判定し、その結果に基いて、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、当該事項に関し権限を有する地方公共団体の機関に対し、必要な勧告をしなければならない。
措置要求の手順は以下のとおりです。
1 職員による措置要求
人事委員会又は公平委員会の規則により、職員は書面により措置要求を行います。
2 措置要求の審査・判定
人事委員会又は公平委員会は、調査の後に口頭審理その他の方法により審査を行います。
審査後の判定としては、要求の全部または一部を認めるまたはすべてを認めないのいずれかとなります。
3 判定に基づく勧告など
人事委員会又は公平委員会は、判定の結果に基づいて、その権限に属する事項については自らこれを実行します。
たとえば、人事委員会規則で定めているものは、初任給、昇格及び昇給の基準などです。
人事委員会又は公平委員会の権限に属さない事項については、当該事項について権限を有する地方公共団体の機関に対し必要な勧告を行います。
人事委員会又は公平委員会の審査・判定の手続、およびその結果執るべき措置に関して必要な事項は、次の第48条の規定に基いて、委員会規則で定めなければなりません
地方公務員法第48条(要求及び審査、判定の手続等)
前2条の規定による要求及び審査、判定の手続並びに審査、判定の結果執るべき措置に関し必要な事項は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定めなければならない。
まとめ
今回は
措置要求とは
措置要求ができる内容
そして
措置要求のしくみ
の3点について調べました。
でも、措置要求する権利が与えられているといっても、実際に要求した人がいないと、実感がわかないですね。
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