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処分とは何か?
処分とは
これまでに「処分」という用語が付いたことばには、「分限処分」と「懲戒処分」がありました。
この2つは確かに「処分」でしょう。
どちらも職員の意に反して行われるものです。
いや、間違いました。
職員の「意志とは関係なく」行われる不利益処分です。
以前、「分限処分と懲戒処分は公務員の意に反した不利益処分である。」という記事を書いていました。
上の記事は間違いだったのかもしれません。
念のためですが、2つの処分の目的を確認しておくと、
分限処分・・・公務上の能率の維持や効率性の確保のために行われる処分。職員に対する身分保障を前提としているが、職員がその職責を十分に果たし得ない一定の事由がある場合に行われる処分。
懲戒処分・・・公務員の服務上の義務違反に対して行われる制裁措置。職員に一定の義務違反がある場合に、その道義的責任を追及し、公務員関係の秩序を維持するために行われる制裁的な処分。
不利益処分とは何か?
不利益処分とは
さて、処分には分限処分と懲戒処分がありましたが、では「不利益処分」とは何でしょうか。
これについても以前書いた記事がありました。
前にも書いたのに、よく理解していないのですね。(私自身のことです)
条文を確認してみましょう。
地方公務員法第49条(不利益処分に関する説明書の交付)
1 任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
2 職員は、その意に反して不利益な処分を受けたと思うときは、任命権者に対し処分の事由を記載した説明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定による請求を受けた任命権者は、その日から15日以内に、同項の説明書を交付しなければならない。
4 第1項又は第2項の説明書には、当該処分につき、人事委員会又は公平委員会に対して審査請求をすることができる旨及び審査請求をすることができる期間を記載しなければならない。
「不利益処分」かどうかについては、1と2ですね。
分限処分と懲戒処分は「不利益処分」であることは間違いないようです。
ということは、任命権者が職員に対して分限処分や懲戒処分を行う場合は、必ず事由を記載した説明書を交付することになるのかというと、そうでもないのですね。
どういうことでしょうか?
不利益処分とは、分限処分と懲戒処分だけではないのでしょうか。
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職員の意に反する処分と不利益処分の関係
不利益な処分であっても職員の意に反しない処分
任命権者は、その処分が職員に対しての不利益処分であり、「職員の意に反すると認める」ものであるときに、事由を記載した説明書を交付するのです。
処分を行うときに、職員の意に反していないと任命権者が判断するものには、説明書は交付しないのです。
分限処分と懲戒処分の不利益処分についても、職員の意に反してなければ、説明書は交付しないのです。
ちょっと難しいですね。
職員の意に反する処分であっても不利益ではない処分
これはもっと難しいかもしれません。
そもそも職員にとって不利益でない処分とは何なのか?
しかし、それは職員の意に反している?
事例を見てみると、「転任」がらみのことが該当するようです。
例:本人の意思の如何にかかわらず転任させることはできるが、その意に反して転任させることがいかなる場合にも本条にいう不利益処分でないと速断することはできない。(昭39)
例:地方公務員たる教育公務員の転任処分が不利益処分に当たるかどうかは、あらゆる事情を勘案して総合的に決せられるべきものであり、単にいわゆる市街校より部落校へ転任を命ぜられたことの一事をもって、ただちに右転任処分が不利益処分であるということはできない。(昭30)
ずいぶん昔の例しかありませんが、転任が不利益処分なのかどうかということでしょうか。
「転任処分」という用語もあったようです。
今は何か問題があるとすぐに懲戒免職や停職になりますよね。
職員の意に反する不利益な、任命権者による行為
これは、任命権者が職員に対して、職員の意に反する、職員にとって不利益なことをしたのだけれども、それが処分には該当しないもののことです。
ますますむずかしい。
そんな嫌がらせのようなことを、任命権者がするのだろうかと思ってしまいます。
でも職員が不利益だと感じること、意に反すると感じることはあるでしょう。
たとえば、最近は退職手当が年々減ってきています。
処分があったわけでもないのに退職手当は減額になっています。
地方自治体の現状によるのでしょうけれども、これを不利益と感じる職員がいるかもしれません。
意に反すると感じる職員ももちろんいるかもしれません。
でも、処分ではないので、不利益処分には該当しないのですね。
まとめ
今回は不利益処分について調べました。
分限処分と懲戒処分は明らかに不利益処分に該当します。
地方公務員法第49条によると、職員の意に反する不利益処分を行う場合は、処分の事由を記載した説明書を交付しなければなりません。
しかし次の3つの場合は、任命権者は処分の事由を記載した説明書を交付しません。
①不利益処分であっても職員の意に反しない処分
②職員の意に反する処分であっても不利益ではない処分
そして
③職員の意に反する不利益な、任命権者による「行為」
③については任命権者は「処分」としていないのです。
確認ですが、上の3つについては、任命権者は処分の事由を記載した説明書を交付しません。
ことばの解釈はややこしいです。
次回は、任命権者が処分の事由を記載した説明書を交付しなかったとき、その処分について職員が意に反すると感じた場合にどうするか、を調べてみます。
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