PISA型「読解力」指導のこれから|カリキュラム・マネジメントの前の話

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はじめに・・・改正教育基本法の施行

今回から2冊目の本に入ります。

 

 

カリキュラム・マネジメント以前の内容ですが、どのようにしてカリキュラム・マネジメントが生まれてきたのか手に取るように理解できます。

 

それでははじまりはじまりー

 

はじめに・・・改正教育基本法の施行

 

改正教育基本法が、平成18年12月22日に公布・施行された。
これから、我が国の教育は、学校教育も含めて、この法律の理念の実現を目指して進められていくことになる。
そのための基本的な方針や講ずべき施策等について基本的な計画を定めるため、今後、教育振興基本計画が策定される。
さらに、学校教育法はじめ関連法の改正等もこれから行われる運びである。

 

このような流れの先に学習指導要領の改訂がある。
学校教育に携わる関係者は、このような法令レベルの動きにも関心を払いつつ、教育活動や授業の在り方について改善を図っていくことになる。
PISA型「読解力」の指導のこれからについて考えることもその有力な一環である。

 

PISA型「読解力」指導のこれから|カリキュラム・マネジメントの前の話

PISA型「読解力」に係る経緯

PISA型「読解力」に係る経緯

 

PISA型「読解力」の発端は、いわゆる「PISAショック」である。

 

「読解力」という言葉が学校教育の枠を超え、社会的な関心事となったのは、平成16年12月に、OECD/PISA2003年調査の結果が公表されて後のことである。
それ以来2年余りが過ぎ、この間、文部科学省は、平成17年12月には「読解力向上プログラム」を策定し、その一環として、同月、「読解力向上に関する指導資料」を作成するなどしてきた。その後1年余り、教育委員会においても各種の取り組みが多くなされ、その結果、学校段階においても一定の授業改善も図られてきた。

 

このような経緯を踏まえ、現時点において、PISA調査及びその調査領域の一つである読解力 Reading Literacy に関して共通に確認しておくべきことは、おおむね次のようなことである。

 

〇 PISA調査は、OECDの国際教育インジケータ事業(INES)の一環として実施されていること。この事業は、経済のグローバル化とともに、世界各国の教育を共通の枠組み・指標に基づいて比較し、国際的なレベルで、自国の教育施策(インプット)の成果(アウトプット)をモニターする必要性があるとの認識に基づくであること。

 

〇 PISA調査は、満15歳児を対象として実施されていること。その年齢はおおむね義務教育修了段階として想定されていて、それまでに身につけた知識や技能等を活用しつつ、社会の中で出会ういろいろな課題に対応する力を見るものであること。(学校教育における特定の教育課程の特定の教科等の力を見るものではないこと。)その意味で、きわめて生涯学習的な性格の強いこと。

 

〇 PISA調査の Reading Literacy を、我が国の報告書では読解力と訳しているため、当初、日本の伝統的な読解力と混同しての反応もかなりあったが、現在では、日本の伝統的な読解力と重なる部分は持ちつつも全体としてはかなり様相の異なる概念のものであるとの、適切な理解が進みつつあること。

 

〇 一方で、日本における読解力に関する指導については、きちんとした研究と実践の積み上げの歴史があること。読解・読書指導と併称されることもあるように、読書指導との関連で取り組まれてきた経緯もあること。また、これまでに、PISA型「読解力」に相当するような指導の提案もすでに一部にはあること。

 

PISA型「読解力」指導のこれから|カリキュラム・マネジメントの前の話

 

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PISA型「読解力」と国語科における読むことの指導

PISA型「読解力」と国語科における読むことの指導

 

現在、PISA型「読解力」は、国語科を中心に、各学校の実際の指導の中で注目を浴びている。
それに触発されるかのように、国語科においては、読むことの指導一般への再認識も進んでいる。

 

現行の国語科の学習指導要領では、国語科を構成する3領域すなわち「A話すこと・聞くこと」、「B書くこと」及び「C読むこと」の指導が調和的に行われることを目指している。
中でも、C領域の指導に関しては、「目的に応じて的確に読みとる能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する」(教育課程審議会答申、平成10年7月、国語科の「改善の基本方針」)こととされ、「文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方」を改めることが求められている。
このような現行国語科の基本的な考え方からしても、上に述べたような、昨今の国語科における読むことへの着目、ある意味での回帰は意義が大きい。

 

とはいえ、これから特に重要なことは、読むことの指導の考え方や内実である。
現在、国語科では、PISA型「読解力」の考え方や内容を生かすことが求められている。
その場合、より直接的には、まず、国語科で育てる力としてのPISA型「読解力」は、PISA調査の趣旨にのっとり、生活や社会の中で活用できる力として国語力であるという考え方に立つ必要がある。
さらには、PISA型「読解力」を含めて、国語科で身につける知識・技能、読むことの能力等の国語力は、学校の中では、他教科等で学習する際に活用できる力、役立つ力として位置づける必要がある。
現在の国語科は、このような、社会生活や他の教科等での学習で実際に生かすという視野をいまだ十分には持てていない。

 

したがって、今後、国語科は、教育課程の組織的・体系的展開という意味からも、このような従来からの枠を、他教科等との連携という軸を立てることを通して超えていく必要がある。
このことが実現するためには、国語科内部だけの取り組みではなく、所要の言語能力の育成について、他教科等からの積極的な働きかけや要望を得ることが重要である。
国語科以外の教科等は遠慮することなく、国語科への働きかけを行っていくことを期待したい。

 

PISA型「読解力」指導のこれから|カリキュラム・マネジメントの前の話

PISA型「読解力」指導の基本的な考え方

PISA型「読解力」指導の基本的な考え方

 

PISA型「読解力」は、特定の教科に属するものでもなく特定の内容をもつものでもない。
小学校、中学校、高等学校を通じて、国語科を中心としつつも、全教育活動の中でその育成に取り組んでいくべきものである。
したがって、国語科および他教科等においてPISA型「読解力」を育てていこうとする場合、次のような考え方で取り組む必要がある。

 

〇 カリキュラム・マネジメントの視点に立って、学校としての組織的・体系的な教育機能の発揮を目指し、全教育課程で取り組むこと。

 

〇 学校や授業に対し、新たな教育内容を持ち込むものではないという考えに立つこと。その意味で、無用な負担感を感ずる必要ないこと。

 

〇 あくまでも、各教科等の特質(ねらい、内容等)の下での工夫であること。(各教科の本旨に立つことによってこそ育成されること。)

 

〇 通常の授業の改善という視点に立つこと。(必ずしも、単元・題材等を新設するのではないこと。)通常の当該教科等の授業を行う中で身につけていくという意識を持つこと。

 

〇 必ずしも授業の全体ではなく、読解力向上に役立つ学習活動のできる授業場面を設定する発想を持つこと。

 

〇 多様なテキストを扱うという視点に立って、各教科等における教材の中から読解力向上に役立つ教材を選定し活用すること。

 

つづく

 

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